メタノールのアジア市況が暴落している。足元のアジア価格は今年2月と比べると1トン当たり100ドル以上下落し、170ドル前後で推移。リーマン・ショックが発生した2008年以来の価格水準となった。深刻な玉余りに見舞われていることが背景にある。需要側はコロナウイルスを背景に誘導品の荷動きが悪化しているほか、中国のMTO(メタノールからのオレフィン製造)の2社が4月から稼働停止に入っており、メタノール消費は急激に細っている。また、今年2月から稼働を再開した複数のイラン供給元が中国に安値で玉を押し込んでおり、価格に下げ圧力をかけている。

 メタノールは昨年12月中旬にマレーシア・ペトロナスが設備トラブルを起こしたほか、同時期にイランの複数社が原料の天然ガスが民生用に多く回されたことで、生産停止を余儀なくされた。域内の玉が絞られたほか、イラン品の最大輸入元である中国の沿岸部の在庫が減少したことで、1月末には、昨年末から40ドル高の280ドル前後まで上昇した。

 ただ、こうした騰勢は長くは続かなかった。ペトロナスが2月上旬から正常稼働に戻り、イラン供給元も中旬から続々と立ち上がり出した。一方、需要は中国のMTOの2社が2月から定修に入ったことで減少し、価格はじわり安に転じた。

 3月以降は、市場関係者の予想を超える落ち込みを見せている。要因はコロナウイルスの感染拡大にともない、経済活動が停滞していることに尽きる。コロナウイルスの影響下でも、何とか需要を持ちこたえていた韓国や台湾、東南アジアも3月下旬から急激に荷動きが鈍くなったようだ。

 すでに、大半のメタノール誘導品が需要減退に陥っている。合板の接着剤用途としての需要があるホルマリン向けは、コロナウイルス感染拡大が広がる欧米での引き合いが強いだけに、大きな打撃を受けている。また、自動車生産が振るわないことで、ポリアセタール需要も芳しくない。MTOは、2月から1カ月間の定修を終えた中国のMTO2社とは別に、4月から2社が稼働を止めた。そのうち1社は大手のため、玉余りに拍車をかけている。

 イランでは、安定稼働に戻ってからは中国への輸出を強めているもよう。その理由に、中国に次いでイラン品を購入しているインドで3月下旬からロックダウン(都市封鎖)が行われていることが挙げられる。インドではイラン品の購入が途絶えているもよう。イランは、インドに輸出できなくなった分も中国に安値で押し込む格好となり、アジア価格を下押す一因につながっている。

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