メタノールのアジア市況は当面、弱基調が続く公算が大きい。供給元が安定するなか、新型コロナウイルス感染拡大にともない需要が冷え込んでいる。4月には2008年のリーマン・ショック発生時以来の価格帯まで沈んだ。この先もコロナウイルスが収束しない限りは誘導品の復調は見込めないもよう。また、主要消費先のMTO(メタノールからのオレフィン製造)も中国で4月から2社が稼働停止に踏み切っている。一方、供給側は域外で稼働停止の動きが出ているが、アジア域内への影響は軽微との見方が強い。

 メタノールは、玉余りを背景に今春に約12年ぶりに1トン当たり170ドル前後まで下落した。昨年末から稼働停止していたイランの複数基が今年2月から続々と復旧したほか、マレーシアの供給元も2月以降は安定稼働にある。また、中国を除く世界の供給元は主に天然ガスを原料にメタノールを生産しているが、天然ガス由来だと柔軟に稼働率を調整することが難しいといわれる。こうした背景から、全体的に供給元は高い稼働率を維持しているようだ。

 一方、需要は鈍化の一途をたどる。3月から新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、ホルマリンをはじめポリアセタール、酢酸など誘導品需要が減退している。

 この先も上げ材料に乏しい。MTOでは、中国・山東省の1社が4月上旬から定修に入ったほか、生産設備を2基保有する南京の1社が不採算を理由に4月下旬から数週間の稼働停止を行っている。今後、オレフィン市況が上昇すれば生産元は稼働率を引き上げる意欲が高まるが、すでに既存のMTO設備は約8割稼働を維持しているため、稼働率を高める余地はそれほど残っていない。

 供給側では、最大手のメタネックスが新型コロナウイルスの蔓延による需要減退を見通し、3月中旬からトリニダード・トバゴ、4月初旬からチリの設備の稼働休止に踏み切った。それでもアジア域内の流入は一部に過ぎないようで、域内の上げ材料にはいたらないとの見方が大勢となっている。

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