来日した米モデルナのポール・バートン最高医療責任者(CMO)は27日、オンライン会見を開き、感染報告が欧米で相次ぐ「サル痘」ワクチンの開発に着手したことを明らかにした。また、開発を行っているオミクロン株に対応した新型コロナワクチンに関しては20日施行の「緊急承認制度」を活用する方針を掲げ、日本にも「秋までに届けられるようにしたい」と語った。

 天然痘に似た感染症のサル痘は、ここ数週間、欧米で複数の集団感染が報告され、拡大が懸念されている。バートンCMOは、サル痘は「非常に難しいウイルス」としつつも、同社が持つメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンプラットフォームを使い、開発に「優先的に取り組みたい」考え。

 一方、新型コロナウイルスの従来株とオミクロン株に同時対応した「2価ワクチン」については、一定の有効性と安全性を確認できたことに触れたうえで、「数週間内にデータを公開する」。並行して生産も近く開始予定。秋をめどに世界各地に供給できる準備を進めていることを強調した。

 日本でもmRNAワクチンが生産できる体制を敷く構想を掲げるなか、日本法人モデルナ・ジャパンの鈴木蘭美社長は、パートナーシップを結んでいるカナダや豪州を例に挙げ、「日本でも同様の体制を整えるのが急務」と指摘。着工から供給まで2~3年かかることに触れ、「早ければ早いほど良い」と力を込め、現在、構想具体化へ厚生労働省と協議中だともした。

 新型コロナウイルス以外でも目下、さまざまなmRNAワクチンを開発していることも紹介した。同社が開発中のサイトメガロウイルスワクチンの場合、第2相臨床試験(P2)で強い免疫原性を認めたと公表した。さらに「代謝性疾患でも開発を進めている」(バートンCMO)と続け、プロピオン酸血症(PA)ではP1/2が実施中だとした。今後、モデルナが持つ技術基盤を生かし、感染症、がん、心血管系疾患、希少疾患、自己免疫性疾患と幅広い領域を対象にワクチン実用化を図っていく計画。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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