米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンで異物混入の報告が国内で続いている。今月中旬以降に異物が確認されたロットなどの使用を見合わせているが、対象ロットの接種後に2人死亡した。別のロットでも接種前のバイアル(瓶)やシリンジ(注射器)内の異物が報告されている。異物の詳細は今週前半にも公表予定。厚生労働省によると、ワクチンを充填したバイアルを打栓する時や注射針をバイアルに刺した時などにゴム片が混入した可能性があるという。

 異物報告を受けて26日から使用を見合わせた3ロットのうち1ロットで、接種後に死亡した人が2人いることが判明した。ともに基礎疾患やアレルギー歴のない30代男性。国内流通を担う武田薬品工業と厚労省がワクチンとの因果関係を調査する。

 3ロット以外でも異物が確認されている。沖縄県は29日、使用前のバイアル内や注射針を刺した後のバイアル内、バイアルからワクチンを採取した後のシリンジ内で計5件の異物があったと発表。鳥取県や群馬県も同日までに異物混入を公表した。「3ロット見合わせ」の原因となった異物は今月中旬から報告されたものだが、7月以前からも異物は確認されていた。

 厚労省は、異物の多くは、工場でワクチンをバイアルに充填して打栓した時や接種会場でバイアルからシリンジに採取した時に混入したゴム片だとみている。ゴム片の場合、滅菌処理されていることやアレルギー対応の原材料が使われていること、筋肉内注射であるため血管内には入らないことから、「健康上の大きな問題はない」と考えている。

 同省が把握している打栓時のゴム混入は35ロット中20件。モデルナ製を日本向けに製造しているスペインの製薬企業ROVI(ロビ)は29日、バイアル充填など最終工程に問題がなかったか調査していることを発表した。打栓時のゴム片混入は他のワクチン製造でも生じることがある。

 注射針を刺した時の混入は「コアリング」という現象で、バイアルのゴム栓に対して斜めに注射針を刺したり、回転させたりするとゴムの一部が削れてバイアル内に混入することがある。ファイザー製でも報告されているという。厚労省は各自治体や接種施設に対し、コアリングについて改めて注意喚起する。

 異物の詳細はモデルナがロビと調査中。異物が報告された検体を分析中で、今週前半にも結果が判明する見通し。また、沖縄で報告されたシリンジ内の異物1件はピンク色で「明らかに大きい」サイズだったことから、厚労省はシリンジに原因がある可能性があるとみている。使用されたシリンジを確認中で、製造元に調査を依頼する予定。

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