米モデルナの新型コロナウイルスワクチンに異物が混入していた問題で、同社と日本の流通を担当する武田薬品工業は1日、異物はステンレススチールだったとの調査結果を発表した。ワクチンをバイアル(瓶)に充填する工程で、製造設備の不具合による摩擦が生じ、粒子状の破片が入ったとみている。混入したものを接種しても「医療上のリスクが増大する可能性は低い」というが、ステンレス片が確認された1ロット、同時期に製造された2ロットを自主回収する。この3ロット以外で報告されている異物については、打栓時や接種前に混入した瓶のゴム栓の一部だとしている。

 日本向けの同ワクチンを製造しているスペインの製薬企業ROVI(ロビ)が異物のサンプルを分析した結果、「316ステンレススチール」だと分かった。医療機器や食品設備などに使われるハイグレードのステンレス素材。仮に筋肉内に注入された場合、注射部位で副反応が起きる可能性はあるが、重大な副作用を引き起こす可能性は低いという。

 調査結果を受け武田は、ステンレス粒子が確認された製造ロットと、同時期に同じ製造ラインでキャンペーン製造された2ロットを自主回収する。3ロットは8月26日から使用中止されているが、合計160万回分のうち約50万回はすでに接種されている。

 ロビによると、ワクチンを充填したバイアルを打栓する時の金属部品2つが正しく配置されなかったため、摩擦による部品の破片が混入した可能性が高いという。3ロットを製造する前に行ったラインの切り替え作業で部品が不適切に配置されたとみている。今後は検査機器の検出レベルを厳しくしたり、製造ラインの目視確認を強化したりするなどして再発防止に努める。

 3ロット以外でも異物報告はあるが、ステンレス片ではないとみており、回収対象にはしない。8月下旬以降に沖縄県、群馬県、神奈川県の接種会場でバイアルやシリンジ内の異物が確認されている。武田と厚生労働省は、ほとんどは工場の打栓時か、接種会場でバイアルからシリンジに採取した時(穿刺時)に混入したゴム片だとみている。

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