ドイツ政府は、ウクライナが独製兵器を購入する際の資金援助を決めた。従来、自軍の装備を直接供与するばかりで、軍事的支援に消極的と批判されていた▼ためらっていたのはロシアに多くのエネルギーを依存しているからか。ヒトラーが欧州大陸の大半を武力で占拠した過去を思えば、そればかりではないだろう。ショルツ首相が「北大西洋条約機構や欧州連合の同意のもとで行われなければならない」と付け加えたところに心情が垣間見られる▼『サピエンス全史』などの著作で知られるユバル・ノア・ハラリ氏がウクライナ危機を受け、“歴史家として、ユダヤ人として”ドイツ人にこう呼びかけていた。「あなたたちがナチスではないことは知っている。もう繰り返し証明する必要はない。欧州のリーダーとして銃を取り、自由と民主主義の戦いの最前線に立ってほしい」。東アジアで同様に、力による一方的な現状変更の試みがなされたとき、日本は先の戦争の被害者から何を呼びかけられるだろう▼韓国の尹錫悦次期大統領が派遣した代表団がきょう日本を発つ。戦後最悪といわれる日韓関係の改善に向け日本政府首脳と相次いで会談した。2019年の半導体材料の輸出規制をめぐる両国のやりとりは子供じみていた。建設的な対話の契機となることを期待したい。(22・4・28)

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