2カ月にわたるラクオリア創薬の騒動が決着した。個人株主の提案が株主総会の大勢を制し、最終的に元社長らは退任。新社長には、かつて同社に財務担当として在籍し、現在は同業のユビエンスを経営する武内博文氏が就任した。「国内バイオベンチャーの中でもラクオリアの創薬力はトップクラス」と語る武内社長に聞いた。

◆数年ぶりの古巣への復帰です

 「当時とは状況が変わっており、期待される役割も当然異なる。ラクオリアは2011年にジャスダックに上場したが、翌年に株価が底を打ち、その再建が主な任務だった。自社による臨床試験から手を引き、前臨床もCROに委託するなど刷新した。その後、ユビエンスを立ち上げたことで組織全体を見渡す目がある程度ついたつもりだ」

◆現在のラクオリアの評価や今後の展望は

 「恒常的にライセンス収入が得られるようになったのは大きい。創薬力は、実際に三つの製品を上市にこぎつけた経験が証明している。今後は株主提案での計画通り、以前より自社開発を積極化する。ただし過去に回帰するのではなく、一定の利益が期待できる疾患に対象を絞る。そもそも低分子医薬品の場合、それなりに自社で開発ステージを進めておかないと導出を期待しにくい」

◆計画では「低分子をベースにした新モダリティ」とありますが、抗体や核酸への関心は

 「当社の得意技術はイオンチャネルを標的とした低分子創薬。イオンチャネルは例えば抗体でも狙えるが、これまでの蓄積を考えれば、まずは低分子を優先することになるだろう。ただし新モダリティが自社由来とは限らないし、低分子以外の可能性を排除しているわけではない」

◆今回の騒動では、ユビエンスとのシナジーの有無も争点になりました

 「ユビエンスは、たんぱく質分解薬という低分子による新技術が強み。確かにイオンチャネルをユビエンスの技術で分解するのであれば難易度が高い。だが株主提案でいうシナジーとはそういう趣旨ではない。ユビエンスの開発品の薬理作用を評価するのにイオンチャネルの手法を使うといった意味だ。当社技術の価値向上にもつながる」

◆22年までに黒字化を目指すとのことですが、その後は安定的に黒字が続くのでしょうか。
 「それは言い切れない。創薬は、時に大規模な経営資源を投入する必要がある事業。一般的にバイオベンチャーの株主には、短期的な利益を求めるタイプと、長期的な支援を続けるタイプがいる。今回の株主総会の結果から、当社には長期支援型が少なくないと解釈している。合理性のある経営判断であれば理解を示してくれるはずだ」

◆株主との対話の強化もうたっています。

 「株主提案が可決された一因に、過去の情報発信に対する不満があったと思う。バイオベンチャーにおいて時宜を得たIR情報の開示は欠かせない。本当は、昔とったきねづかで自分がやりたいくらいだが、さすがにそうもいかない。SNSにも長けた適任者に任せようと考えている」

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