コンプライアンスは法令遵守と訳される。最近では動詞のコンプライもよく目にする。従うの意である。6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されるのにともない、コンプライ・オア・エクスプレイン(従うか、説明するか)という概念が広く知られたからだ▼世の中にはいろいろなルールがある。ひとつは法の類いで、従わないと有罪となる。また、求められる条件というのがある。学位を持つ、ふさわしい服装をしている、などだ。コーポレートガバナンス・コードのコードは「規則、規定」であり、スポーツや遊びなどと同様に参加者の行動を縛るルールだ▼善とか徳とか義といったモラルもルールだ。違反しても、違法でなければ罰せられないが批判はされる。もちろん、重大な違法行為は論外だが、本当に大切なルールはこっちではないのかと密かに思っている。普遍的で時代に影響されない決まりごとだからだ▼悪法もまた法なり。本当にそう言ったか定かでないが、理不尽な死刑判決を受けたソクラテス。人格者をも裁くルールとは何なのか。世論や為政者に影響され、恣意的で本質と無関係なルールというのは少なくない。しかし、そのような青臭い考えは、厳しいビジネスの世界では通用しないのだ。いや待て、チャンネル権もない家庭内ルールよりはマシか。(21・4・27)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る