三井化学は、フィルム表面に微細加工を施すことで粘着剤を使わず強力な粘着力を発揮するテープを開発した。従来の粘着剤テープは経時や加熱などで粘着力が変化し、剥がした後に糊が残るといった課題がある。新テープは糊残りせず低汚染で、繰り返し使用しても粘着力が劣化しない。仮留め材料として自動車、ヘルスケアなど幅広い分野で採用が見込まれるほか、面ファスナーとしてもアパレル分野などで代替需要が期待できる。来年に量産準備に入り、2022~23年の本格事業化を目指す。オンラインで開催中の「ケミカル マテリアル Japan2020」に初出展している。

 開発したのは「粘着剤レステープ」(仮称)。「ヤモリが壁や天井に密着している姿にヒントを得た」(研究開発本部機能材料研究所の鎌田潤主席研究員)もので、フィルム表面にマイクロメートルオーダーによる独自の微細加工を施した。物理的相互作用であるファンデルワールス力を応用しており、ガラス、プラスチック、金属といった平滑な面に強力に粘着する。粘着力は樹脂設計技術によりカスタマイズできる。樹脂はオレフィン系やUV硬化系を使用している。木材や人肌など凹凸が激しい表面には不向き。

 テープを剥がした後、糊残りしないのに加え、繰り返し使用可能。シリコンウエハーを被着体に実験したところ、粘着・剥離を35万回繰り返しても粘着力が低下しなかった。使用する樹脂によるが、耐熱性は200度C以上と高く、真空や水中などタフな環境に長期間さらされても粘着力を維持する。

 幅広い分野を対象にサンプルワークを開始した。仮留め材料として、自動車、ヘルスケア、食品包装、コンシューマーなどにユニークな特徴を訴求していく。また、従来の面ファスナーに比べ静かに開閉でき、薄く柔らかで、触れてもチクチクしないといった特徴を生かし、代替提案を進める考え。

 転写技術により微細加工を施すため、既存のフィルム・テープ設備を活用し量産できるとみている。来年から量産準備に入り、量産における課題の洗い出しを進め、22~23年の事業化を目指す。

《ケミカル マテリアル Japan 2020-ONLINE-》

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