三菱ケミカルは、新型コロナウイルス対策製品を相次ぎ開発した。主流のポリプロピレン(PP)製に代わり、熱伝導率が高く快適性に優れるポリエチレン(PE)製の不織布を開発、「マスク向けに近く市場投入する」(和賀昌之社長)。幹部のアイデアを結集し、3Dプリンター技術を用いて体温で顔にフィットするマスクも開発した。またフェイスシールドでは折り曲げ加工しやすい非晶質ポリエチレンテレフタレート(A-PET)シートで飛沫防止効果を高めるとともに、独自の反射防止フィルムを貼り合わせた高機能品を開発。精密な作業が求められる手術医向けなどに展開する。グループ会社が有する抗ウイルス剤をPPに練り込んだコンパウンドは、自動車内装部品向けに訴求する。

 三菱ケミカルはグループの総合力を結集。受付や対面業務で飛沫防止に用いられるアクリル樹脂板や軟質塩化ビニル樹脂(PVC)フィルムのほか、ポリビニルアルコールを原料とする水溶性フィルムを用い、使用ずみのシーツや衣類に触れることなく洗濯可能なランドリーバッグ、PE製の医療用ガウン、フェイスシールドなど多様なコロナ対策製品を供給している。今月には、グループ会社の大阪化成が製造する成分「マルカサイド」を使用した抗ウイルス剤・抗菌スプレーを、グループ会社の新菱が初めて一般消費者向けにEC(電子商取引)サイトで発売する予定。さらに社内のアイデアや社外からのニーズをもとに、相次ぎ対策製品の開発を進め、感染拡大防止に貢献する。

 マスクに用いられている不織布はポリプロピレン(PP)製が主流だが、PPは伝導率が低く体温がこもりやすいため不快に感じる傾向にある。同社は樹脂のなかで熱伝導率が高いPEを用いた不織布を開発。マスク向けに近く市場投入する計画だ。

 デジタル技術を応用しマスクも試作した。テレワーク期間中に「コロナ感染防止で何かできないか、全役員にメールでアイデアを求めた」(和賀社長)ところ、和賀社長の高機能マスクの提案に対し、知見のある役員がデザインし、3Dプリンターを使い即座に試作した。体温で変形する特殊な樹脂を用いることで顔にフィットし、フィルター部分の不織布を張り替えることができ、繰り返し使用可能。

 フェイスシールドはA-PETシートを用いた高機能品を開発した。A-PETは透明性や耐薬品性などに優れ、折り曲げ加工もしやすい特徴がある。折り曲げ度合いを高めることで飛沫防止効果が高まり、曇り止め加工も施した。さらに蛾の眼の構造を模倣し、微細な突起が光の屈折率変化を緩やかにし反射を大幅に低減できるフィルム「モスマイト」を貼り合わせた。口元の動きを見る手話通訳や、精密な作業が求められる手術医などに展開していく。

 抗菌・抗ウイルス分野では、大阪化成が有する抗菌・抗ウイルス成分「マルカサイド」を練り込んだPPコンパウンドを開発。インパネなど自動車の内装部品向けに需要があるとみて訴求していく。(渡邉康広)

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