新型コロナウイルスが世界の話題の中心になって数カ月が過ぎた。これに伴い「富山」という名前を頻繁に見聞するようになった。この地名に由来する社名を持ち、治療薬候補「アビガン」を製造販売する富士フイルム富山化学の名を目にしない日はないほどだ▼それだけではない。日医工、アクティブファーマ、富士化学工業、立山化成など富山県の企業がアビガンの製剤・原薬・中間体の製造を受託したり増産したりするというニュースが目白押しだった▼富山は言わずと知れた「薬都」である。江戸時代から始まる配置薬業から続く国内でも有数の医薬品製造拠点であり、県も産業競争力の維持と強化に積極的に取り組んでいる。県の製造業出荷額のうち医薬品は10%以上を占め、都道府県別の医薬品生産金額でみても、2014年から18年までの5年間、15、16年のトップを含め2位以上を維持している▼日本の薬都から始まった「先用後利」のシステムである配置薬(置き薬)は海外にも普及している。モンゴルでは04年から日本財団の支援を受けて置き薬事業がスタート。安全性の高い良質の伝統医療サービスを普及させた。モンゴルでの成功がモデルとなり、タイやミャンマー、ベトナムで置き薬が導入されている▼「高志の国」富山の面目躍如たる二例を紹介させてもらった。(20・6・3)

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