新型コロナウイルスの感染拡大が世界の化学産業の先行きに影を落とし始めた。BASFは2020年の世界の化学品生産の成長率が08~09年の金融危機以来、最も低くなるとの見通しを示した。財務面への影響は十分に予測できる段階ではないとする企業が多いなか、ソルベイとアルケマは当面の減収幅を公表しており、業績の下押し要因になることが現実的になっている。
 BASFは19年業績を発表する記者会見で20年の世界の化学品生産の成長率見通しを公表した。同社では1・8%だった19年を大幅に下回り、20年は1・2%にとどまると見込んでいる。マイナス成長になった08年と09年のような状況ではないが、金融危機以来、群を抜いて低い水準という。20年の世界経済の成長率も前年の2・6%から2%に減速し、マーティン・ブルーダーミュラー会長は「20年の中国の経済成長率は4・5%」との見込みを明らかにしている。
 こうした見通しの背景には新型コロナウイルスの影響がある。同社ではとくに第1四半期と第2四半期に、ウイルスが世界的に多大なマイナスの影響を及ぼすと予測している。現時点では世界経済に大打撃を与えるようなウイルスの世界的拡散が今年下期まで続くとは想定していない、としているが、ブルーダーミュラー会長は「新型コロナウイルスの影響を今年中に完全に埋め合わせることはできないだろう」と見通しており、20年は世界の化学産業が困難な事業環境の下に置かれることになりそうだ。
 業績への影響は不確定要素が多いことから現状では予測が困難とする企業が多い。ソルベイとアルケマも同様の立場で、状況がはっきりしたら見通しを更新するとしたうえで、ソルベイは第1四半期の調整後EBITDA(金利・税・減価償却費計上前利益)に2500万ユーロ(約29億9500万円)のマイナス効果になるとの見通しを示した。アルケマは2月までの2カ月間でEBITDAに約2000万ユーロの影響を与えたと推定している。
 化学産業の今後に懸念が広がるなか、オドフェルは2月上旬にケミカルタンカーの需要に悪影響を及ぼす可能性を表明しており、化学品物流を担う企業にも不透明感が増している。

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