日本語を習い始めた中華系シンガポール人の彼女。「『おはようございます』は習ったが、実際の日本人は『おはよう○△×※す』と言っていてよく聞き取れない。省略形か」と聞かれた。単にはっきり発音していないだけだと答えておいた。「『あざーす』もある」などといって混乱させてはいけない▼彼女の日本語の発音がすばらしい。まったく違和感がない。それを褒めると、「日本語の発音はすべて中国語の発音に含まれているから難しくない」という。なるほど、そういうことか▼ウクライナ侵攻でロシアが孤立するなか、今後の世界秩序を占ううえで中国の対応が注目されている。中国にとっては覇権を強める契機としたいところだろう。日本も外交手腕が問われる▼米国出身の日本文学者、ドナルド・キーンが「日本は古代に中国からすべてを学んだ。しかしそのすべてではない」との主旨の発言をしていたと記憶している。何を受け取り、何を受け取らなかったか、その選択に日本文化の独自性があるというのがいわんとするところではあったが、発音と同様、日本文化が中国文化の部分集合であることに変わりはない▼日本の考えることを中国はすべて理解できるが、その逆はないとなると、とてもかなわない気がしてくる。もはや古代ではないことを期待したい。(22・4・14)

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