丸紅傘下の投資ファンド、アイ・シグマ・キャピタルは4日、昭和電工の商事子会社、昭光通商への株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。買い付け価格は1株当たり796円で、過去3カ月の終値平均値に23・22%のプレミア分を上乗せした。昭和電工は28・89%分を応募し、TOB成立後は昭光通商は連結対象から外れる。アイ・シグマ・キャピタルは丸紅グループに昭光通商を取り込むことで利益率改善や経営の効率化が図れると判断した。

 アイ・シグマ・キャピタルは特別目的会社を通じて4月15日までの30営業日でTOBを実施する。予定する株式を全て取得した場合の総額は74億円で、持ち株比率は85・1%になる。昭和電工は昭光通商との取引関係を継続し、経営に一定程度関与するために14・9%分は保有し続ける。TOB成立後は昭光通商は上場廃止となる予定だ。

 昭光通商は1947年の設立で、76年に昭和電工の商事子会社と合併し、82年に現社名となった。昭和電工グループの中核商社として化学品や合成樹脂、金属セラミックスなどを手掛ける。20年12月期売上高は1000億円、営業利益は12億円と収益面で苦戦する。

 昭和電工は昭光通商の企業価値向上、親子上場などの観点から18年秋頃に資本関見直しの検討を開始、新たな事業パートナーを探してきた。その中で、同じ芙蓉グループで社風や企業文化の面で親和性のあるアイ・シグマ・キャピタルが関心を示し、20年8月頃から交渉が本格化した。昭光通商は買い付け価格を踏まえ株主に対するTOBへの応募推奨は行わないが、賛同は表明している。

 アイ・シグマ・キャピタルは丸紅グループが国内外に持つネットワークやスケールメリットを活用しての仕入れ、調達、物流面の強化や販売網の相互連携などで昭光通商の利益率の改善や経営の効率化が図れるとみる。昭光通商子会社で17年に資金循環取引が発生しており、適切なガバナンス(企業投資)体制も構築する考えだ。

 昭和電工は約1兆円を投じた旧日立化成(現昭和電工マテリアルズ)の買収に伴う財務体質の改善、事業ポートフォリオ再編を目指し、2000億円分の事業を売却する方針を打ち出している。20年1月には、米投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントに飲料用アルミ缶と電子部品などに使うアルミ圧延品の両事業を約500億円で売却すると発表した。

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