みんな見たことがあるのに名前は聞いたことがない-ということがたまにある。真ん中から2つに割れて調味料などをかける小分け包装容器。片手で扱えて手が汚れない。その名前は「ディスペンパック」だったが、昨年9月に「パキッテ」に変更された▼もともと米国で考案されたもので、電信柱に登って作業する人が片手で薬が塗れるようにするのが目的だった。食品用途に展開したのは日本で、キユーピー、三菱商事などの合弁会社ディスペンパックジャパンが1987年に事業化した▼神奈川県と山梨県の工場で生産しており、その数は年間5億個強。日本が世界で生産量が一番多く、2種類の中身を出せるようにしているのも日本だけ。ケチャップとマスタードを一度にソーセージにかけられるのは便利だ▼ディスペンパックはディスペンス(分配する)とパックを組み合わせた造語だった。従来は業務用が中心だったが、家庭用に需要の裾野が広がるとともに、化粧品など用途も多角化しつつある。そこで親しみやすさを打ち出すため名称変更したそうだ▼“名は体を表す”というが、パキッテの方が確かに分かりやすい。中身の鮮度を保ちながら、しかも使う時には割れやすく。地味ではあるが、日本の高度な素材技術や加工技術が活用されているアプリケーションだろう。(20・9・18)

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