東京五輪・パラリンピックイヤーが幕開けし、パンフレットなどの印刷物、それに用いられるインキも「特需」が期待される。だが、当事者達はそれほどの期待感はないようだ。あるインキメーカーのトップによれば今のところ予想ほどの引き合いはなく、「それだけデジタル化が進んでいる証拠」と嘆く▼特需といえるかは別にして、間近に迫る節分の風物詩である恵方巻きの生産量は減る見込みのようだ。昨年もスーパーなどで山積みされ、売れ残った恵方巻きの大量廃棄が話題になった。テレビなどで頻繁に放映されたことが記憶に残る。フードロスへの対応から恵方巻きも予約制が広がっているという▼この動きが、容器包装に用いられるフィルムや印刷インキの需要に影響を及ぼしている。別のトップは「初めは昨年より減っている理由が分からなかった」と驚きを隠せない。同じ流れから、コンビニエンスストアで売られるおにぎりの生産量も影響を受けていると聞く▼SDGs(持続可能な開発目標)に対する意識が高まるなか、社会に貢献する製品が当然のように要求される。環境保全やユニバーサルデザインはその一つで、フィルムやインキメーカーも対応を強めている。特需を当てにせず、社会変化に合わせた地道な取り組みが企業にとってますます大事になっている。(20・1・16)

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