京都大学は6日、感染症研究で著名な仏パスツール研究所が開発した抗体検査技術を用い、新型コロナウイルス感染症の疫学調査を行うと発表した。滋賀県長浜市の住民3000人と京大病院の医療従事者1500人を調べ、無症状感染者など感染歴の把握やその遺伝的背景を解析する。感染歴のある人の行動や生活様式も調査し、ウイルスの伝播と社会的行動の関連を分析し感染対策に役立てる。

 パスツール研の検査技術は新型コロナの7種の抗原に対する抗体の有無を測定できる。1~2つの抗原を対象とする従来の抗体検査に比べて感度や特異度に優れ、不顕性感染者を正確に掴める。

 疫学調査は2月にも開始し、4月に結果をまとめる。パスツール研の抗体検査は唾液を検体に使い、インフルエンザや季節性コロナウイルス、アデノウイルスなどに対する過去の感染歴も同時に把握できる。疫学調査を通じて性能を確かめ、商品化も検討する。

 京大は2007年から長浜市の住民1万人を対象に遺伝子解析を含めた健康追跡調査を行い、12年からは経済産業研究所と連携して行動様式などの社会科学調査も実施。病気と遺伝因子、環境、行動の関係性を研究してきた。

 今回の疫学調査の目的は新型コロナの無症状感染者の存在や遺伝的背景、行動様式を研究すること。京大医学研究科附属ゲノム医学センターの松田文彦センター長は「感染者に多い生活様式や行動、活動、嗜好なども明らかになり、新たな感染症に備え、流行前に国民に注意喚起し行動変容を促すといった対策に生かせる」としている。

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