社会保障を巡っては高齢者と若い世代の不公平感が指摘される。毎月支払う厚生年金の納付額はこれまで段階的に増え、受給開始年齢も引き上げられた。少子高齢化が進むなか、世代間の負担の格差は否応なく進んだ▼一方で政府は高齢者の負担増も強いる。年収200万円以上で75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う医療費の窓口負担は1割から2割に引き上げられる。現役世代の健康保険料の上昇を抑えるためで、2022年度後半に導入される見込みだ▼19年6月に金融庁が公表した報告書には、老後は2000万円不足すると示されていた。後に撤回されたが、老後は年金のほかに2000万円は必要との印象を人々に与えた。実際は家計収支や定年後に何年生きるかで違う▼厚生労働省の「令和元年簡易生命表の概況」では95歳まで生存する割合が男性10・1%、女性26・7%。医療技術の進展で、さらに長寿化が見込まれる。前出の報告書は、不安のない老後生活には公的年金や退職金だけに頼らず個人による資産形成を促した▼新型コロナウイルスワクチン接種の予約にIT弱者である高齢者は苦労しているが、超高齢化社会に向けては、自分のことは自分でやるという責任が一層重くなるのか。人生100年時代。今のうちから考えておくことがいっぱいありそうだ。(21・6・17)

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