「1つ目は3・5ドル(約235円)、2つ目からは99ドル(約6640円)。欲張らず他人のことを考えて」。トイレ紙売り場の棚にこんな貼り紙をして買い占めを劇的に減らした-。豪州・シドニーのコンビニ店主の機転が3月下旬に喝采を浴びた▼当初は「1人1パックのみ」と掲示したが、従う客はほとんどなかった。同市ではトイレ紙を奪い合って乱闘騒ぎが起こるほどだったが、こんな貼り紙を見せられるとパニック状態の客も冷静になる。効果はてきめんで、売り場に秩序が戻ったという▼わが日本でもコンビニ店主の卓抜なアイデアが話題を呼ぶ。福岡県のコンビニが今月上旬に導入した新型コロナウイルス感染予防策がそれ。お茶やビールなどの冷蔵庫を、手を使わず足で開ける方法を開発した▼冷蔵庫の取っ手は来店客の8割が触るから、こまめな消毒も追いつかない。対策ツールはコの字型に加工したアルミ板をドアの下部に取り付け、ここに足を引っ掛けて開ける仕組み。取っ手に触れずにすみ買い物客から喜ばれている▼ドアを足で開閉するのは行儀が悪いという“常識”を捨てたところに解決策があった。客や従業員にとって何が最善かを考えた末に辿り着いたのだろう。常識を離れた思考回路-。前例に囚われがちな行政当局にこそ、いま最も必要なことかもしれない。(20・4・27)

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