仏サノフィは、新型コロナウイルスワクチンを日本で開発することを決めた。先ごろグローバルで始まった国際第3相臨床試験(P3)に、日本も参加するかたちで開発を進める。欧米では年内の供給開始を目指しており、日本でも同時開発を行う。製造も日本で行う意向で、別のワクチンを製造委託しているUNIGEN(ユニジェン、岐阜県池田町)と協議を始めた。実現すれば世界の大手ワクチンメーカーが開発し、国内生産される「日本製コロナワクチン」が1剤増える。

 在日フランス大使館のフィリップ・セトン大使やサノフィの関係者らが3日、同社の工場を視察し、会見した。サノフィは現在2種類のコロナワクチンを開発しているが、英グラクソ・スミスクライン(GSK)と開発するワクチンの日本導入を決めた。ウイルス抗原のたんぱく質を遺伝子組み換え技術で作って投与するワクチン。ワクチン本体となる抗原をサノフィ、効果を高めるアジュバント(免疫増強剤)をGSKが提供する。

 承認申請用の最終治験となる国際P3を5月末から開始し、日本も参加する。欧米など十数カ国で実施し、計3万5000人以上を登録予定。日本は薬事当局や治験実施施設との調整が終わり次第、症例登録が始まる見通し。21日間隔で2回接種。すでに他社製を2回接種した人も対象にして、追加免疫としてサノフィ製ワクチンの接種を行う臨床試験も近く行う。

 順調に進めば今秋にも治験結果が出て、欧米では10~12月期の供給開始を目指している。サノフィ日本法人でワクチン事業を担当するジェレミー・グロサス氏は3日の記者会見で、日本の実用化時期について「欧米に準じて日本でも供給可能にしたい」と話した。

 日本でサノフィ製コロナワクチンの臨床試験が行われるのは初めて。先行する米ファイザーや米モデルナなどは日本人だけのP1/2を行い、海外P3結果と合わせて承認申請した。だが、サノフィは国内単独の試験は行わず、日本も入ったグローバルP3のデータで申請を目指す。

 製造も日本で行う方針だ。同社の季節性インフルエンザワクチンを海外向けに受託製造しているUNIGENへの委託を検討している。サノフィのコロナワクチンは昆虫細胞を使ってワクチン抗原を培養する技術「BEVS」で製造する。UNIGENも同じ技術を確立しているため技術移転しやすく、原薬製造から製剤化まで請け負える。UNIGENは同様の技術を応用した塩野義製薬のコロナワクチン製造も受託している。

 同社の岐阜工場を視察したセトン大使は、「しっかりした技術的な基盤がある」と評価。「サノフィとUNIGENの協力により、優れた新型コロナウイルスワクチンが世界中で使われる日が一日も早く来ることを祈っている」と語った。

会見するセトン大使(左)ら

昆虫細胞を使いワクチン抗原を培養する

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