総務省が2020年9月にまとめた「統計からみた我が国の高齢者」によると、高齢就業者は増加傾向にある。04年以降、16年連続で前年に比べ増加し、19年は892万人と過去最多となった。

 統計では、非正規の職員・従業員の高齢雇用者に、現在の雇用形態をとっている主な理由を聞いた。このうち男性は「自分の都合のよい時間に働きたいから」(30・9%)が最も高かった。次いで「専門的な技能等をいかせるから」(17・5%)、「家計の補助・学費等を得たいから」(16・5%)など。女性は「自分の都合のよい時間に働きたいから」(38・6%)が最も高く、「家計の補助・学費等を得たいから」(21・1%)、「専門的な技能等をいかせるから」(8・2%)と続いた。

 「自分の都合のよい時間に働きたいから」というのは、元気なうちは働きたいという気持ちの表れであろう。「専門的な技能等をいかせるから」というのは、知恵や技術を伝承したいという気持ちも含まれているかもしれない。「家計の補助・学費等を得たいから」というのは、現役世代で高齢者を支えるのが困難になりつつあるなか、経済力を高め自立した生活を送りたいという思いもあるだろう。

 今年4月1日付で高年齢者雇用安定法の一部が改正施行される。会社は努力義務として「70歳までの就業機会の確保」が求められる。

 東陽テクニカは4月1日、定年後従業員の雇用に関する「シニアマイスター制度」「マイスター制度」の2つの雇用制度を創設する。シニアマイスター制度は定年後再雇用の年齢を65歳から引き上げ、全従業員に対して70歳まで雇用を行う。マイスター制度は、従来定年後の60歳から65歳の従業員に対して適用してきた再雇用制度を見直し、評価に基づく報酬体系に改め就労意欲向上を目指す。優れた技術を持つ社員に意欲を持って長く働いてもらえば、技術流出の防止にもつながるだろう。

 三谷産業は、さらに踏み込んで定年制を事実上廃止し、無期限の継続雇用制度を4月1日施行する。従来は60歳定年時に人材事業などを担うグループ会社のアドニスに転籍し、65歳までは嘱託社員として契約していたが、新制度では60歳となる年度末にアドニスに転籍後も、65歳となる年度末まで正社員として個別雇用契約する。66歳となる年度以降は嘱託社員として契約する(嘱託契約は1年更新)。

 高齢になっても安心して働き続けられる職場環境の整備、能力や経験を生かして社会に貢献し、働きがいを感じられる活躍の場が求められている。

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