2050年までにカーボンニュートラルを実現するために大きな課題となるのが再生可能エネルギーの普及。政府は主力電源として「最大限の導入」を目指すとしているが、再エネ電力の安定供給とともに国民負担をどうするべきかが問われている▼固定価格買い取り制度(FIT)の下、再エネ導入拡大によって国民負担となる再エネ賦課金は増加の一途をたどっている。20年の買い取り総費用は3・8兆円で、回避可能費用を差し引いた再エネ賦課金は約2・4兆円。家庭当たりの負担は年間約1万円と無視できない金額になっている▼国民負担を抑えていくには再エネ導入にかかるコスト削減が欠かせない。現状、太陽光発電のコストは約13円/キロワット時で、中長期的な目標は7円。平野部が少ない日本で無理な開発が進むとかえってコストが上昇する懸念がある▼制度改革が必要な一方、期待されるのはイノベーション。例えば印刷によって低コストで作れるペロブスカイト太陽電池は大面積化など克服すべき課題はあるが、変換効率は着実に高まっているようだ▼政府はイノベーションに挑戦する企業を後押しするため2兆円の基金を創設する。グリーン成長戦略によって生み出される新たな技術は産業競争力の向上のみならず、我々の生活に恩恵をもたらすものであって欲しい。(21・3・12)

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