再生医療の安全に関する手続きなどを定めた再生医療等安全性確保法(安確法)の改正に向けた作業が最終段階に入った。新たに、遺伝子を直接投与する遺伝子治療を規制の対象に加えるほか、メッセンジャーRNA(mRNA)も遺伝子治療関連技術に含める予定にある。技術開発が日進月歩でモダリティ(治療手段)が多様化するなか、法規則の、より迅速な見直し・整備が求められる。

 安確法は2014年施行後の5年以内に、再生医療を取り巻く状況の変化などを勘案して法の規定に検討を加え、必要な場合は措置を講ずるものとされていた。厚生労働省の再生医療等評価部会は19年7月から見直しに向けた検討を開始した。

 ワーキンググループ(WG)も設け、主に医療技術などの変化への対応、再生医療などの安全性と科学妥当性の確保、研究の推進について議論。今年6月に部会がとりまとめた案では、医療技術などの変化への対応で、細胞加工物を用いず、治療用遺伝子を患者に直接投与するin vivo遺伝子治療を安確法の範囲に含めるとした。

 さらに遺伝子治療と技術やリスクが近似するものについて迅速に対応できる法体系とし、ゲノム編集技術を応用した技術は対象範囲とする方向性が示された。一方、とりまとめの議論を重ねるなかでmRNAを利用した新たな技術開発が報告されたため、昨今の技術進歩も踏まえて対象範囲とするか、WGで検討するとした。

 これを受けて6月29日に開催されたWGでは、mRNAを対象に含めることに対して多くの賛成意見を得た。また安確法では、安全上のリスクに応じて再生医療などを第1~3種に分類しているが、mRNAは「ヒトに実施されたことが極めて少なくリスクが高い」と想定される第1種に含めるのが妥当と確認した。mRNA治療薬の実用化が一段と進めば、よりリスクが低い第2種に移行する可能性があるという前提で第1種に位置づける見通し。

 今後、部会で詳細を論議、法改正に向けた具体的作業へ進む。安確法見直しは検討開始から3年で大詰めを迎えたが、その間も研究開発が進展し、mRNAにとどまらず新たな技術が出現している。先端技術が有効なモダリティとして実用化するには安全を確保する環境が不可欠であり、スピード感を持って規制を整備することが求められる。

 モダリティの広がりは、製造用部材など関連産業の発展につながる。日本の再生医療がサプライチェーン全体で成長するためにも、迅速な法整備が必須といえるだろう。

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