ガイスターシュピール。ドイツ語で幽霊試合-すなわち無観客試合をこのように表現する。サッカーのドイツリーグが2カ月ぶりに再開された。強豪チーム・ドルトムントのホームゲームの中継を見た。収容人員8万人以上のスタジアムにもちろん観客はいない▼新型コロナウイルス感染拡大防止のために徹底した対策がとられたようだ。チーム関係者には2回のPCR検査を義務づけ、試合前1週間はホテルにほぼ缶詰め。ベンチにいる控え選手はマスク着用だ▼サッカーは選手同士の接触が避けられないだけに、どんな試合になるのか。心配は杞憂だったようで、いざ始まれば選手達の“スイッチ”が入ったように見えた。コーナーキックの際、ゴール前で敵味方がつばぜり合いを繰り広げるのもいつも通り。ゴールした後の歓喜の抱擁などは見られなかったが▼ゲームの盛り上がりは観客がいればこそだろう。それでも、ひたむきにプレーする選手達に目を奪われた。テレビ越しではあったが、スポーツを観戦できる喜びをかみしめた▼日本のプロスポーツは大部分が休止を余儀なくされている。再開を目指し模索が続いているようだが、「コロナ前」に戻ることは難しいように思える。しかし、どんな姿であってもスポーツが持つ力は変わらないはず、と信じて待ち続けるしかない。(20・5・22)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る