日立製作所の元社長であり、日本経済団体連合会の前会長だった中西宏明氏が先月、死去した。リーマン・ショックの直撃を受けて製造業最大の赤字に陥った日立をV字回復させただけではなく、ITとモノづくりを融合したビジネスモデルへの移行は東芝をはじめとする総合電機にあるべき姿を示した。国内外で数々の再建を成し遂げた豪腕は、化学業界にも多大な影響を与えている。昭和電工が日立化成(現昭和電工マテリアルズ)買収を実現できたのは中西氏の聖域無き子会社再編があってこそ。日立化成を契機に、日立電線を統合していた日立金属もファンドへの売却が決まった。「御三家」解体にめどがついたところでの訃報だった。

 日立製作所の東原敏昭社長は2019年、「たとえ数百億円の事業でも利益率が低ければ撤退する」と明言。このためにIoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」を活用し、「ルマーダにつながらない事業は重視しない」方針を打ち出した。この方針によって日立化成、日立金属とも「ノンコア」の位置づけになり、売却リストに載った。日立化成は品質問題を抱えて利益率が低下していたし、日立製作所の方でも英ウィルファ原発の採算が悪化して減損計上を余儀なくされていた事情はあるが、最終的に日立化成の売却は、「中西氏の胸先三寸」であった。

 いま昭和電工マテリアルズは半導体とクルマに牽引され、業績好調である。国内化学業界最大のM&Aは順調な滑り出しだ。部材業界の本格的な再編を後押しするものになるとの見方も出てきた。続きは本紙で

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