初めてフルマラソンを走ったのは10年前の11月20日の神戸マラソン。目標はとにかく完走すること。事前にハーフマラソンを走ったが、いわゆる「30キロの壁」を乗り越えられるだろうか。不安だらけでスタートしたことを覚えている▼30キロを過ぎて足が上がらなくなったが、目標をかなえることができた。ゴール後に達成感はあったが、果たして全力を出し切ったのかという思いも残った。その後、何度かフルマラソンを走ったが、いつも同じ思いが去来する▼約42キロの長丁場を走り切るためには自分なりのペース配分が求められる。後半に余力を残しておきたいので、前半はつい抑え気味になってしまう。これがタイム伸び悩みの原因と思われるが、30キロ過ぎに失速する恐怖から逃れられない▼公務員ランナーとして活躍し、プロに転向した川内優輝選手の走りっぷりがうらやましかった。ゴールすると精も根も尽き果てたように倒れ込むシーンは感動的だった。タイムは遙かに及ばなくても立てなくなるぐらい力を振り絞ることは自分にもできるんじゃないかと思わせてくれた▼しかし練習でできないことを本番で実現できる訳がない。これは何事にも当てはまるだろう。自分を追い込むことから逃げていては力は出し切れない。頭では分かってはいるものの実践するのはとても難しい。(21・11・19)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る