総合商社のトップに相次ぎ化学品出身が就く。三井物産の堀健一氏と、伊藤忠商事の石井敬太氏で、いずれも4月1日付で社長に就任する。世界が持続可能社会を目指すなか、化学業界で培った知見やネットワークを駆使し、持続可能社会から求められる仕組みを作り上げ収益源に育てることが使命だ▼メディアには「三井物産は資源依存からの脱却が課題」「伊藤忠、ファミリーマートの立て直しなるか」などの見出しが踊っている。確かに、三井物産の資源分野の利益率は競合に比べ高く、市況に左右されやすい事業構造の転換が急がれ、伊藤忠もファミマ事業の業績回復が課題ではある▼しかし、資源もエネルギーも流通も持続可能社会に欠かせない。堀氏は「多様な事業の強みを融合させるのが総合商社ならではの仕事」と語る。一方、石井氏はキーワードに「マーケットイン」「持続可能社会」を挙げ、消費者や社会から発信される新しい価値観に合うモノやサービスを提供するのがこれからの総合商社の生きるべき道とする▼化学業界は「地味な業界」(石井氏)だが、あらゆる業界と接点のある、他の産業にない特徴がある。これまでの経験やネットワークを生かしつつ、社会課題を解決するビジネスモデルを構築できるかどうか。新社長の手腕に注目したい。 (21・1・18)

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