戦前戦後の日本経済を支え牽引してきた鉄鋼産業。しかし中国メーカーによる過剰生産とそれに伴う市況悪化が続き、米中貿易摩擦の激化を背景に製品輸出も落ち込み、苦境に陥っている。国内最大メーカーの日本製鉄は東京ドーム30個分に及ぶ呉製鉄所を2023年9月をめどに閉鎖することを決めている。冬の時代の到来だ▼一方、化学産業はどうか。「鉄は国家なり」に対し「化学は社会なり」と言う人もいる。あらゆる産業に素材を供給し、見渡せば化学材料を使っていないモノを探す方が苦労するほど社会に浸透している。過去には公害を生んだ暗い歴史もあるが、それを経験したからこそ懸命に努力し環境を改善し快適な生活に資する素材を開発し供給してきた▼20世紀が物理の時代だったとすれば、21世紀は化学の時代になると信じている。人類の脅威となっている新型コロナウイルスでは、感染防止材料の供給からワクチンや治療薬の開発まで化学の力が欠かせない。気候変動など環境課題についても、化学だからこそ解決できるソリューションがある▼近未来の社会は想像できるが、どのような現実が待つのか誰にも分からない。不確実な時代だからこそ1つのシナリオに決め打ちせず、あらゆる可能性に賭けてほしい。化学にはそれだけのポテンシャルがある。 (20・10・12)続きは本紙で

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