新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて以降、初の化粧品各社の決算が出揃った。中国における消費やインバウンド(訪日外国人)需要落ち込みに始まり、店頭活動の制限、店舗の時短営業・休業などが世界的に広がった影響が各社の業績を直撃。インバウンド需要を糸口にグローバル展開を加速し、続けてきた成長が足止めされたかたちだ。収束の見通しが立たないことから、今期業績予想を取り下げたり、未定とした企業もあった。

 通期決算を公表したコーセーは、昨秋の消費増税により第3四半期から売り上げが鈍化。回復前に新型コロナの影響が生じたため、減収減益となった。売上高を地域別にみると、アジア(海外は2019年1~12月の業績)は18年度比25%増と好調だったが、7割弱を占める国内の同7・3%減が響いた。今期は19年度比で売上高12・5%減の2866億円、営業利益57・2%減の172億円を見込む。

 マンダムは海外売上高が伸長したが、27年に向けた長期ビジョンにかかわる基盤整備を進めたことで増収減益となった。海外伸長の背景には18年に買収したACGI(マレーシア)の業績が加わったことなどがある。しかし、今期の業績予想は新型コロナの影響で未定とした。さらに、第13次中期経営計画(3カ年)の開始を今期から来期へと1年後ろ倒しし、23~27年度の5カ年計画だった第14次中計は24~27年度の4カ年に変更する。

 増収増益となったのがファンケルだ。インバウンド需要を含む国内は新型コロナの影響を受けたが、越境EC(電子商取引)への販路拡大などの効果で化粧品事業が好調に推移したため。今期は19年度比で売上高0・1%増の1270億円、営業利益同2・6%増の145億円になる見通し。

 一方、1~3月が第1四半期にあたる各社では厳しい業績があらわになった。

 資生堂は新型コロナの発生による世界的な市場環境の悪化で営業減益となったことなどを受け、第1四半期の純利益が19年度同期比95・8%減の14億円で着地した。それにともない、今期予想を取り下げた。

 同期間における花王グループの化粧品事業の営業利益も前年同期比で98・4%減の1億円、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の営業利益も同70%減の20億円となった。ともに、新型コロナによるインバウンド需要の減少や店頭カウンセリング活動の制限などが打撃となった。花王は日用品や化学品も展開しているため通期予想は据え置くが、ポーラ・オルビスHDは当初の業績予想を下方修正する。

 当面は新型コロナ感染症による事態の収束が見通せず、収束しても以前のような消費意欲が回復するまでに時間がかかるとの見方が主流だ。ただ、中国ではすでに復調の兆しがみられるとする企業も少なくない。そうしたなか、資生堂では現地の美容部員がオフラインとオンラインを組み合わせた新たな販促活動に着手。今後は、他者との距離を保った「新しい生活様式」に合わせた提案が不可欠となりそうだ。

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