新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大にともなって発生している医薬品原薬の調達困難問題が、薬価改定に影響を及ぼしそうだ。都市封鎖や航空便の減少で海外からの原薬調達が途絶したり、調達費が上昇。平時とは異なる流通価格の医薬品が増えている。コロナ対策で医療崩壊の瀬戸際にあるなか、医薬品卸と医療機関・薬局との価格交渉も進んでおらず、薬価改定の根拠にする薬価調査を行える状況ではないとの意見が強まっている。

 27日に開かれた中央社会保険医療協議会薬価専門部会では、海外からの原薬の調達困難などで、「医薬品800品目が出荷制限の状況にある」(日本薬剤師会)と報告された。製薬会社による原薬の調達費には通常輸送費を含むが、足元では運賃高騰分を原薬価格に転嫁する異例の取引も聞かれる。日本製薬工業協会によると、原薬確保にチャーター便を使う事例もあるという。

 2年前の薬価制度抜本改革では、隔年(偶数年)に行っている薬価改定を毎年実施する方針を決め、その最初が2021年4月にあたる。薬価改定は市場実勢価格の調査に基づき公定薬価を引き下げる。実勢価の調査は例年9月に実施するため、6月には方向性を固める必要がある。部会では「通常と同様のスケジュールを前提に議論を進めるのは問題だ」との意見が多かった。

 次の部会では業界関係団体を呼び、コロナ影響など実態を聴き取りする。「苦境を聞いても前に進めない。どういう方法であれば薬価調査ができるのか案を示してほしい」。支払い側の健康保険組合連合会などは代替案を要求している。

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