デジタル化が進む社会において必要不可欠なのが半導体。世界的に不足が長期化するなか、自動車メーカーが減産を余儀なくされるなど影響が広がっているように、安定調達は幅広い産業の競争力に直結する問題となっている▼半導体製造受託の世界最大手である台湾TSMCが熊本県に新工場を建設することになった。ソニーグループとの合弁で子会社を設立する。当初の設備投資額は約8000億円にも上るというが、誘致に力を入れてきた日本政府が補助金などで半分程度を支援する方向▼中国が半導体の国産化を推進するため巨額の補助金を出し、米国も手厚い支援策を打ち出している。もともと半導体は資金力がカギを握る産業といわれてきたが、民間の力だけで国際的な競争を勝ち抜くことは困難になったようにみえる▼経済安全保障の観点からも重要性が高まる半導体。世界市場で存在感を失ってしまった日本は外資誘致というカードを切って再建への一歩を踏み出すが、並行して次世代技術を自国で育成していくことも忘れてはならない▼例えばモールド(型)を使ってパターニングするナノインプリントは省エネ性に優れており、市場ニーズに合致する技術ではないだろうか。競争力がある部材、装置メーカーを巻き込んで産学官連携の成功例を作り出してほしい。(21・11・12)

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