日本薬業貿易協会(日薬貿)の藤川伊知郎会長(藤川社長)が、CPhIジャパンのオンラインセミナーで講演し、原薬などのサプライチェーン(SC)に対する新型コロナウイルス感染症の影響や課題を語った。新型コロナの世界的流行は、中国やインドに依存したSCのリスクを露呈したが、SCの見直しや国産化をすぐに進めるのは難しい。藤川会長は、原薬メーカーの安定供給を後押しする規制緩和や顧客の対応が必要だとした。

 最初に感染が広がった中国では、2~3月頃に原薬の安定供給が一部で懸念された。日薬貿が会員各社に行ったアンケートによると、3月初め時点では原料や人員の不足、当局の命令による操業停止、物流・郵便の停止、通関手続きの停滞などの問題があった。だが中国からはもともと、春節を迎える1月後半~2月前半より前に買いだめする習慣があるため、手持ちの在庫で対応できた品目が多く、影響は限定的だったという。

 より影響が大きかったのはインド。まずロックダウン(都市封鎖)などで国内の輸送が難しくなり、空港機能の麻痺や旅客便の欠航により日本へ輸送できない状態に陥った。原材料や中間体を国内外から調達することも難しいため、製造自体にも影響が及んだ。4月に行った会員アンケートでは、35社中17社が「原薬・中間体の輸入ができない」と回答し、輸入できない原薬が32品目、中間体が6品目あった。この状況が続けば欠品する可能性がある製剤も26品目あることがわかった。藤川会長によると、現在は段階的にロックダウンが解除されてきたものの、国際旅客便は再開しておらず輸送力は回復していないという。

 藤川会長は、「これまでSCというと『製造が突然止まるリスク』が注目されていたが、コロナにより『物流が止まるリスク』も顕在化した」と指摘し、今の状況が続けば「予定通りに製造できないリスク」も高まってくるとの見解を示した。

 SCを見直す必要性はあるものの、各社が品質とコストの両立を追求して出来上がったのが今のSCであり、これをすぐに変更するのは難しい。複数ソース化などが対策として考えられるが、調達先が増えるほど管理コストも増える。藤川会長は今のSCで対応できる原薬の安定供給確保策として、日本と欧米の規格や試験方法を統一する薬事調和、日本特有の品質レベルを求める「上乗せ規格」の見直しなどを挙げ、「原薬メーカーが供給責任を果たせるような環境を作ることが重要だ」と話した。

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