国立循環器病研究センターは医療機器メーカーのニプロと共同開発した長期連続運転対応の体外式膜型人工肺(ECMO)の救命率を検証する治験を、新型コロナウイルスの重症患者の治療を行う東京、大阪の基幹9病院と共同で実施すると発表した。国循は開発したECMO用ポンプについては48日間連続作動することを実証しており、ECMOシステムとしての実用化に向けて臨床データを収集するため共同治験に移行することにした。

 日本医療研究開発機構(AMED)が行うウイルス等感染症対策技術開発事業の一環で、新型コロナウイルスの感染で重度の呼吸器不全を起している患者を対象に実施。今年9月半ばから来年3月末までの7カ月間で国循を含めた10病院合わせ50人にECMOを装着し長期使用でも不具合が発生しないか検証する。

 既存のECMOは長期間作動させると血液が凝固しやすくなり患者に血栓症が起きるリスクがある。このため一週間程度で装置を交換しなければならず、コロナ治療を行う病院が重症患者の受け入れ人数を増やせない要因の一つとなっている。

 国循とニプロは血液を循環させるポンプの高速回転翼が装置の外枠に接触しない軸受けを採用し、さらにポンプ内壁に特殊なコーティング処理を行いECMOを長期間作動させても血液の凝固を防ぐことに成功。ニプロは医療機器としての実用化を目指した装置技術の確立に取り組んでいる。

 今回の共同治験の責任者である国循の福嶌教偉移植医療部長は「高性能ECMOシステムの効果が実証できれば重篤なコロナ患者を救う画期的な医療機器になる。第三波が来た時に重症患者の救命に役立てたい」とした。

 共同治験には都内から国立国際医療研究センターなど5施設。府内は大阪大学医学部附属病院など4施設が参画する。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る