国立国際医療研究センター(NCGM)は、新型コロナウイルス感染症のレジストリ研究を基に「第5波」の状況を総括した報告をまとめた。発症から入院までの期間が長期化するにつれ、呼吸困難症状などの重症化リスクが高まっていたことが分かった。同センターの松永展明臨床疫学室長は「重症化予防の観点から、機を逸しない治療が可能な医療体制の確保が肝要だ」と強調した。

 第5波では感染者数が大幅に増加したものの、新規陽性者数に占める重症者の割合が低下しており、高齢者のワクチン接種が効果的であったことを示した。重症化予防や感染拡大抑制のためにも「追加接種はいぜんとして重要。今後も状況に応じてワクチンを接種する必要がある」(同)。

 オミクロン株感染拡大による第6波でも「重症患者数を抑えるため、ひいては新規感染を抑えるために感染対策を徹底することが重要だ」(同)と訴えた。

 第5波に比べて足元の重症者は少ないものの、東京都の病床使用率は上昇している。中等症Ⅰ以上の入院患者のうち酸素投与が必要な患者は比較的少ないが、第6波は「酸素投与は必ずしも必要ではないが病状が悪く入院している患者が目立つ」(大曲貴夫国際感染症センター長)。たとえば若年者で、咽頭痛が非常に強く食事もとれないため点滴が必要な患者もいる。

 現在の治療場面では、オミクロン株であることが明らかな場合や、感染地域などからオミクロン株と推定される場合、またいずれの変異株か不明な場合には英グラクソ・スミスクライン(GSK)の抗体医薬「ソトロビマブ」を使う。大曲センター長は「ゲノム解析は時間がかかり、全検体には実施できていないだろう」と話す。製剤の効果を発揮する「ゴールデンタイム」を逃さずに迅速な治療を行うため、株が判明しない段階でも、どの抗体製剤を使用するか判断している状況とにらむ。

 すでに抗体カクテル療法「ロナプリーブ」は、オミクロン株に対しては効果が低下することが判明している。一方でデルタ株と判明している場合にはロナプリーブの有効性が期待でき、継続的に使われている。

 経口薬「モルヌピラビル」は診断後迅速に処方でき、点滴も不要で利便性が高い。処方可能な医療機関や調剤薬局の登録が増えており供給体制に問題が生じている兆しは「現時点ではない」(同)。

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