国立国際医療研究センター(NCGM)の研究グループは、新型コロナウイルス感染症の重症化を血中の因子によって予測できることを明らかにした。分泌たんぱく質ケモカインの一種「CCL17」の血中濃度が基準値を下回ると重症・重篤化することを突き止めた。重症化する数日前に急増する別の因子も割り出しており、的確な治療を行ううえでの迅速診断法確立につながりそうだ。

 新型コロナウイルス感染症の場合、患者の約8割が軽症ですむ一方、残り2割は重症化するといわれている。軽症から一気に悪化することが知られているが、感染初期の段階から見分けることは難しい。このため、症状がある際には経過観察を行う必要がある。

 そこで研究グループは、軽症者16人、重症者12人から集めた血液を分析・比較。重症化予測に結び付く可能性のある因子の探索に着手した。網羅的解析を加えた結果、軽症回復者と重症化する患者を見分けることが可能な因子として、CCL17など5つを見いだした。

 まず感染初期段階から違いがあったのがCCL17。軽症回復者と重症化患者との間で血中濃度に差があり、重症・重篤化する場合は一定値よりも低い状態が続いていた。また、細胞が産生する分子であるインターフェロンラムダ3、CXCL9、IP-10、IL-6の4因子については、重症化に陥る数日前から血液中の値が上昇することも分かった。

 今回の結果を踏まえ、グループは、早ければ1カ月以内に国内25施設で前向き試験を実施する。目標症例数は1000例を予定。同時に提携先は明らかにしていないが、企業とともに製品化を目指した共同開発も進めており、できれば来週にも申請する方向で医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議も重ねている。

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