小ぶりな地球儀を自宅の机に置いている。原稿書きに行き詰まったりすると、くるくる回して、これまでの海外旅行先を探す。旅したのは6カ国。けっして多いほうではないだろうが、そのぶん思い出の密度は高いような気もする▼すこし少なめだからこそ、次はここ、その次は…と願望をたくましくすることもできる。そういえばまだ南半球がないなぁ、次はニュージーランドあたりへ…等々▼トイレの壁にはメルカトル図法の世界地図を貼ってある。子どもが小学生だか中学生の頃に、便器に腰掛けながら地図を見て地理や世界史の勉強になるようにと貼って、長じてもそのままにしてある。こちらには家族みんなが行った先に、丸い色とりどりの頭がついたピンを刺している。10カ国ある▼このあいだテレビで『80日間世界一周』の映画を放映していた。気球に乗ったり、象に乗ったり、現実的ではない手段も使われていたが、やはり旅はロマンを誘う。そういえば『浪漫飛行』という曲もあった▼若い頃はできるだけ行ったことのない国に行きたいと思っていたが、いまは一度行った場所を再び訪ね、思い出と二重映しになるような旅をしたい。そんなときはいつ来るだろう。コロナ感染の心配がなくなったら、個人的にはローマがいい。地球儀を回しながらの空想は楽しい。(21・4・14)

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