塩野義製薬の手代木功社長は29日に開催した記者会見で、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬やワクチンの開発計画を説明した。無症状・軽症患者に対する経口治療薬は、年内に臨床試験を終えて承認申請の準備を始める。来年3月までに100万人分を準備する。海外向けにも開発する。ワクチンは10月中に次の段階の臨床試験を開始し、来年3月の供給開始を目指す。

 同社が開発中のコロナ治療薬「S-217622」は27日に国内第2/3相臨床試験(P2/3)を開始した。無症状・軽症患者を約2100人登録し、発症率や症状改善にかかった時間などを評価する。自治体の協力を得てホテル療養者などの治験参加を見込む。年内に終え、承認申請に向けた協議を薬事当局と始めたい計画だ。海外展開も考えており、治験実施について欧米の薬事当局と協議を始める。

 量産体制も準備する。「国内で数百万人分をいつでも作れるようにしておくのは必須」(手代木社長)とし、中間体以降は国内ですべて合成できる体制を敷く。まず100万人分を来年3月までに供給できる原材料、製造能力は確保したという。

 経口薬は米メルク、米ファイザー、スイス・ロシュの開発品が進んでおり、海外では年内にも緊急承認される見通し。手代木社長は、217622の動物実験データでは、「先行している3つと同等かそれ以上」の抗ウイルス活性があると期待を示した。作用機序が同じファイザー製と比較した特徴として服用頻度が少ないことなどを挙げた。

 ワクチンは、最初に開発した製剤では十分な中和活性が見込めなかったため、効果を高めるアジュバント(免疫増強剤)を変えた新製剤で再開発。8月開始の追加のP1/2は全症例で2回接種が完了し、データ収集中だ。現時点では「他のワクチンと遜色ないかそれ以上の中和抗体価は確認できた。自信を持ってP3に向かいたい」。

 次は3000人規模の国内試験を10月下旬に始める予定。英オックスフォード大学と協力し、英国を中心に3回目のブースター接種を検証する治験も今秋に始める方向で調整中。最終段階の大規模治験のデザインは未定だが、年度内の実用化を目指す。来年度には経鼻投与型ワクチンの治験も開始する。

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