塩野義製薬と島津製作所は2日、新型コロナウイルスなど感染症領域を対象とした下水モニタリングの業務提携に関する基本合意書を5月31日に締結したと発表した。PCR検査技術などを用い、塩野義は下水処理場の流入下水(都市下水)で、島津は都市下水とトイレ排水でモニタリングの実績がある。下水採取や測定方法などで協力し、共同事業体設立も視野に早期の社会実装を目指す。島津が持つ全有機体炭素計(TOC計)の技術の活用も議論していく。

 新型コロナ感染者の糞便には発症前段階からウイルスが存在。下水疫学によるモニタリングは感染状況の把握に寄与する。両社はウイルス自動検出やモニタリングデータによる感染状況、変異株発生の早期検知などのシステム構築で協力する。

 塩野義は北海道大学との共同研究で、欧米などと比較して新型コロナウイルス濃度が低い日本の都市下水に対応した、高感度ウイルス検出法を開発している。現在、大阪府の協力の下、モニタリングを実施中だ。

 島津では、グループの島津テクノリサーチが都市下水に加え、高齢者福祉施設など特定施設の新型コロナ感染を監視する受託検査「京都モデル」を展開。京都大学などの技術指導を受けつつ、トイレ排水のPCR検査で集団感染の有無を確認し、陽性となれば唾液などで感染者を特定している。変異株への対応も推進している。

 両社では、下水のサンプリング手法や分析技術などで情報を交換。それぞれが協業する大学などを含めた協力体制を構築していく。新たなパートナーとの連携も検討する。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る