ほ乳類は、生まれてしばらくは欲しいもの、快適な環境が得られないと泣き叫ぶ。ほ乳類の中でも頂点に立つとされる人間は、成熟した後さえ幼児的であるケースが少なくない。何か不都合なこと、期待外れなことが起こると誰かのせいにし、非難し、怒りをぶつけたりする▼スーパーやドラッグストアでは依然としてトイレットペーパーの品切れ状態が続いている。きっと不当に買い占めた者がいるに違いない。店はなぜもっと豊富に在庫を持たないのか。そう腹を立て非難したくなる。どうしてなのか。自宅にあるトイレットペーパーであと何日過ごせるのか不安だからだ。そんな小さな自分の精神にも腹が立つ▼人はたいてい、国なり、企業なり、町なりどこかの組織に属している。組織にはそれぞれ独自のシステムがあって、それらは必ずしも万人にとって快適なものではない。そうと分かっていても、組織がまるで自分の家のように快適でないとき、人は組織に腹を立てる▼人類も他の生物も、自然災害や疾病といった困難に繰り返し襲われてきた。あの大震災からわずか9年の現在、われわれは新型コロナウイルスの感染拡大という新たな困難に直面している。誰かを非難しているだけでは何も解決しない。弱く小さな自分を奮い立たせ、大きな視点に立って考えたい。(20・3・10)

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