きょうの大寒を挟んで、小寒から立春までの合計30日間は「寒の内」。1年を通して寒さが最も厳しい時期だ。「干鮭も 空也の痩せも 寒の内」(松尾芭蕉)。いかにも寒さを想像させるが、この期間が終わり「寒明け」に迎える春を思いながら耐え忍ぶとする▼寒の時期の食べ物は上質で栄養価も高いといわれる。冷たい水でついた寒餅や寒卵、寒蜆、寒海苔などがあり、さらに大寒に産まれた大寒卵は健康運と金運にご利益があるというから人気。寒の時期に醤油や味噌、日本酒を仕込む「寒仕込み」も雑菌が混入しにくく、発酵に時間がかかりゆっくり熟成できる利点がある▼寒仕込みの元の言葉は日本酒製造の「寒造り」で、幕府が制定した酒造統制の一つだった。他の時期のものより醸造の失敗が少なく、出来のいいお酒になることで寒の時期以外の製造を禁止した。日本酒の仕込みが冬季に限定されたことで農閑期にあたる農民の出稼ぎ先ともなり、各地域の蔵ごとに杜氏の集団が生まれた▼岩手の南部杜氏、新潟の越後杜氏、灘の丹波杜氏の日本三大杜氏は人数も多く、各地の名酒の担い手となっている。熱燗が心と体を温めるのに効果があるとは酒飲みの持論。温めるから銘柄は気にしない方だが、それでは失礼。好みの人肌程度を想定し厳選してみることにする。(22・1・20)

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