去年の12月初旬まで時計の針を戻す。6日は小惑星探査機「はやぶさ2」再突入カプセルがオーストラリアで回収された。2日後にはカプセルがJAXA相模原キャンパスに輸送完了。以後、JAXAからサンプル採取確認やガス分析結果の情報が発表される▼ほぼ同じ頃7日、重要なニュースが流れていた。北大、九大などのグループによる「太陽系形成より古い有機分子ヘキサメチレンテトラミン(HMT)を炭素質隕石から検出」だ。この聞き慣れない物質HMTは太陽系形成以前に生成した極めて始原的な分子。これまでにHMTが隕石など地球外物質の分析で検出されたことはなかった。HMTはリュウグウのサンプルにも存在することが予想されるという▼HMTの分子レベルでの精密な分析には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高分解能質量分析計などが用いられた。リュウグウの試料分析にも活躍しているはずだ。液体クロマトグラフィーの生みの親ツウェット博士も、地球外物質の分析にクロマトが利用されるとはつゆほども思わなかっただろう▼さて、今度は約2カ月先に針を進める。3月21日、この日はクロマトグラファーたちには特別な日だという。1903年に、液体クロマトグラフィーの原点となる講演をツウェットがワルシャワで行っている。(21・1・27)

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