富士フイルムホールディングスは31日、社長・会長人事を発表した。後藤禎一取締役が社長兼CEOに就任し助野健児社長兼COOが会長兼取締役会議長に就く。21年にわたり社長、会長として経営の舵取りを担った古森重隆会長兼CEOは退任し、最高顧問に就く。事業会社の富士フイルムも同体制に刷新する。6月の株主総会を経て正式決定する。

 同日、3人そろって都内で会見を開き、新体制の抱負を話した。冒頭、古森会長が「できることはほぼ成し遂げた。人材も整い、後進に託すタイミングがきた」とあいさつ。助野氏のサポートに感謝するとともに、新たに社長に就任する後藤氏を「国際感覚があり、メディカル分野を成長させた人物」と高く評価した。

 後藤氏は「ヘルスケアのさらなる成長、製品・業務の両面でデジタルトランスフォーメーションの推進、世界で活躍できる人材の強化」の3つを目標に掲げた。

 古森氏は00年に社長に就任。主力の写真フィルム事業が消滅する危機に直面し、写真技術を応用してTACフィルムや化粧品などの新事業を育成した。ヘルスケア分野では08年に富山化学工業(現富士フイルム富山化学)、17年に和光純薬工業(現富士フイルム和光純薬)を買収。事業の多角化を進め、現在の富士フイルムグループの礎を築いた。近年は日立製作所の画像診断関連事業の買収に加え、米ゼロックスとの合弁解消で富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)を完全子会社化。足元の業績では11年に本格参入したバイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)が好調に推移する。こうして構造改革・成長戦略にめどがついたことから、新経営体制への移行を決断した。

 後藤氏はシンガポールや中国など海外勤務経験が豊富で、事業ではメディカルシステム分野を長年率いてきた。社長就任後は、買収した日立製作所の画像診断関連事業とのシナジー創出に期待がかかる。

 後藤 禎一氏〔ごとう・ていいち〕83年(昭和58年)関西学院大学社会学部卒、同年富士写真フイルム(現富士フイルム)入社.14年富士フイルム執行役員メディカルシステム事業部長、18年富士フイルムホールディングス取締役、20年富士フイルム取締役専務執行役員。富山県出身、62歳。

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