1913年、独BASFのカール・ボッシュが工業化に成功した、空気中の窒素からアンモニアを製造する技術が、窒素系肥料の供給というかたちで食糧増産に大きく寄与したことは、化学業界の人なら知っているだろう。1世紀を超え、現代でもこの手法はアンモニア製造の主流を担っている▼ドイツの化学産業は同国経済の柱だ。さらにイノベーション創出をはじめ、世界の化学産業においても中心的な役割を果たしてきた。そのドイツの化学産業がロシアのウクライナ侵攻によって、深刻な打撃を受ける可能性がある▼ドイツの医薬品を含む化学産業は、原燃料として天然ガスを年間約280万トン使用しており、これはドイツ全体の3割近い消費量にあたる。ドイツは天然ガスの多くをロシアに依存しているが、これがもし止まった場合、ヨーロッパ最大のドイツ経済は30兆円のダメージを被るとも試算されている▼元々、コロナの影響などによってドイツ経済は打撃を受けていたが、回復の兆しがみえつつあったところへ、降って湧くような今回の事態。長期化しないことを祈るしかない▼翻って日本の化学産業。85万人を超える雇用を支え、出荷額・付加価値額とも自動車産業に次ぐ2位の基幹産業である。ヨーロッパが直面する状況は対岸の火事では済まされないだろう。(22・4・18)

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