島津製作所は、東北大学と呼気(エアロゾル)を試料に用いた「呼気オミックス」による新型コロナウイルス検査法を開発したと発表した。同社の高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060NX」を用いて、PCR検査と同等の精度を無侵襲で実現する世界初の試み。炎症の指標となるサイトカインなどの生体由来たんぱく質や代謝物も同時に検出、診断に加えて、病期・病状の評価、重症化リスク、予後・合併症の予測などもできる。今後、東海大学の協力も得て、臨床研究や試料の調製方法などの検討を進める。16日、東北大(仙台市青葉区)で会見した医学系研究科の赤池孝章教授は「1年後には医療機器としての国内申請を行いたい」との意向を示した。

 文科省の1次補正予算(国立大学の研究基盤の強化)による新型コロナ感染事業「新型コロナウイルス対策に向けた呼気オミックス解析システム」の成果。両者は5月に東北大医学部内に呼気オミックス研究センターを設置して進めてきた。

 東北大が開発した高性能呼気エアロゾル回収装置により、5分間の安静時呼吸で約1ミリリットルの呼気凝縮液を被験者自身で採取。全自動前処理システムでウイルスを不活性化して、LCMSで解析する。1時間以内の診断も可能となる。

 上気道由来の鼻咽頭ぬぐい液や唾液を試料とするPCR検査では、約30%の偽陰性者が出る。現在、多くの研究者が下気道でのウイルス増殖をその原因とみており、呼気を試料とする検査法はその課題を解消する可能性がある。

 呼気を用いた検査法は、新型コロナにとどまらずインフルエンザなどにも適応可能。新型コロナ収束後もデータを蓄積し、AI(人工知能)などを用いた呼気医療のプラットフォームの構築を進めていく考え。東北メディカル・メガバンクなどとの連携も視野に入れる。

 会見で東北大の大野英男総長は「ポストコロナ、ニューノーマルへ向けた大きな成果となる」と期待。島津製作所の上田輝久社長は「新たな検査法を世界に発信していきたい」と意気込みを語った。

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