島津製作所と熊本大学、分析機器製造のベンチャーのアイスティサイエンス(和歌山県和歌山市、佐々野僚一社長)は、新型コロナウイルスの重症化予測技術を発表した。患者の血液、尿から抽出したRNAを使用し、従来よりも安全性を確保しながら短時間かつ全自動での分析を実現した。大学病院をはじめとした大手医療機関などをメインターゲットに製薬会社とも連携を深めていく。発売予定は2021年6月。
 従来の検査方法は、唾液や鼻咽頭ぬぐい液などから検体を入手する。しかし検体そのものに感染リスクが存在することで、2次感染の恐れがあった。また判定までに時間が必要なことや、検査プロセスでの人為的エラー、精度、重症化判定や予後予測ができないという課題を抱えていた。
 「修飾核酸分析システム」は島津製作所の液体クロマトグラフ(LC)、質量分析計(MS)に、アイスティサイエンス製の自動前処理装置で構成されている。前処理からLC、MS装置への移動、分析まで自動化したことが最大の特徴。また重症化への関連性が示唆されるバイオマーカー候補である「修飾ヌクレオシド」を6分で測定可能なほか、前処理時間も従来の35分から6分に短縮している。
 修飾ヌクレオシドは、新型コロナウイルス患者の尿や血液に多く含まれている物質。核酸の分解産物で、重症化によって増加することが熊本大学の富澤一仁教授らのグループによって明らかになっている。
 島津製作所本社(京都市中京区)で会見した同社のライフサイエンス事業統括部向紀雄統括部長は「先端技術を社会に還元していくことが当社の使命。この技術を世界に広めていきたい」と抱負を語った。熊本大学の富澤教授は「患者が重症化するかどうかが予測できるため、患者の治療計画、療養場所の選定などの判断が可能になる」と社会実装された時のメリットを語った。

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