1月19日の都道府県対抗男子駅伝をTV観戦中、突然選手たちの足元がアップになった。「あの厚底シューズをNHKも取り上げるのか」と身を乗り出したら、カメラが狙ったのは選手を先導する白バイ警官。肩透かしを食らって苦笑いである▼話題のシューズはナイキのヴェイパーフライ。内部に埋め込まれた炭素繊維のプレートが反発力を高める。ここ数年世界の長距離界を席巻し、箱根駅伝でも選手の85%が使用したとか。それが世界陸連によって禁止される可能性が報じられ、注目度はさらに増す▼つい最近まで、長距離ランナーのシューズは薄くて軽いのが定番だった。その先入観から素人目には違和感が付きまとうが、市民ランナーの初級レベルでも走りやすく、タイム短縮にもつながるらしい。東京五輪で禁止となれば一波乱だがどうなるか▼革新的素材やブレークスルー製品はスポーツの競技力向上に少なからず影響する。靴や用具の機能に応じた鍛え方も必要になるが、ベースはあくまで選手自身の能力・技量だろう▼前回1964年東京五輪のマラソン。アベベの優勝タイムは当時世界最高の2時間12分11秒だった。56年後の現在の世界最高は2時間1分39秒。半世紀以上かけて10分32秒短縮できた。このうちシューズの進歩が貢献したのはどの程度なのだろうか。(20・1・27)

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