広栄化学は、1液の熱硬化型ウレタンを80度Cの低温で硬化できる触媒とブロックイソシアネート(BI)を開発した。触媒の反応性を高め、BIのブロック剤を最適化。この温度領域の実現は世界初とみられる。従来の2分の1の温度で硬化できるため、低耐熱の樹脂が基材の用途にも適用できるほか、塗装ラインの省エネルギー化や工程短縮化も見込める。同社は塗料やコーティング向けに提案する方針。オンラインで開催中の「ケミカル マテリアル Japan 2020」でも紹介している。

 一般的な1液型ウレタンでは硬化剤のBIのブロック剤は種類にもよるが約150度Cで解離し、主剤のポリオールと反応して硬化する。広栄化学はスズ系触媒(DBTDL)ではなく、MEKO(メチルエチルケトオキシム)などの汎用ブロック剤を使ったBIと組み合わせて100度C硬化を実現する触媒「URECKO」シリーズをすでに開発ずみ。ただ、ポリエチレンテレフタレート(PET)など耐熱性の低い樹脂が基材の用途では熱ダメージの課題も残り、さらに低温化を追求した。

 今回、触媒の反応活性を高めた「同C021」と、相性の良いブロック剤を採用したBI「KONPUS-B」を開発。両製品の相乗効果で80度C、25分以内の硬化を実現する。ブロック剤は高揮発性により不可逆的に解離するため反応効率が高い。化学物質審査規制法(化審法)や各国の高懸念該当物質にも非該当。MEKOなどのブロック剤を使った既存のBIをKONPUS-Bに置き換えるだけでも、低温化効果を示す。貯蔵安定性にも優れており、常温下で1液での長期保存が可能。

 ウレタンは同じく低温硬化のメラミン塗料に比べて耐候性に優れるが、高温焼き付け設備を持たずに塗装できないユーザーも多かったことから適用範囲の拡大が期待できる。加熱に時間を要する厚みのある自動車金属部品の塗装などのエネルギー削減、生産性向上にも貢献する。同社は引き合いの多い溶剤系の塗料、コーティングへの展開を想定する。一方、水系向けのニーズも見込んでおり、自動車塗装で注目が高まっている鋼板と樹脂部品の一体塗装への展開も視野に入れている。

 ただ、現状は触媒の耐水性の検証が必要としている。サンプルワークの過程でユーザーからのフィードバックを収集し、水系向けに最適化したグレードの開発に反映させていく方針だ。

 同社は湿気硬化型ウレタン向けの臭気や発泡を抑える硬化剤「KONPUS-S」を揃えるなど、自社ブランドのウレタン関連製品を拡充している。

《ケミカル マテリアル Japan 2020-ONLINE-》

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