オンライン授業やテレワークがやむを得ないのは分かっている。むしろ推し進めるべきだという意見にも半分は賛成だ。でも、ほんとうにだいじょうぶか、と最近強く思う▼学業や仕事の達成度の問題ではなく、学校に行かない、街に出ない、そんなことが、若い男女の出会いを著しく減らしていることへの心配である。ただでさえ、非婚率が高まっており、少子化に歯止めがかかっていない現状では、その懸念が強くならざるを得ない▼学生時代や職場で出会った人と結婚している人は多いだろう。統計にもしっかり表れている。社会保障・人口問題研究所の2015年「結婚と出産に関する全国調査」によると、夫妻が知り合ったきっかけをみると、職場や仕事が3割、学校が1割強、合わせて4割強で半分近い▼家にこもっていればその機会が失われる。オンラインのデートや飲み会があるから大丈夫、とはどうしても思えない。同じ場所で同じ空気を吸った者同士の感情の交流なくて恋愛は望めない、と考えるのは古いのだろうか▼オンラインは、リアルな空間の人間のふれあいを補完することはできても、代替することはできないだろう。これからどれほど技術が進化しても。〈観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生〉(栗木京子)。こんな空間が恋愛を育むのである。(20・7・15)

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