デジタル化や少子化の流れのなかで印刷物に使われる紙の需要は縮小傾向にある。一方でプラスチック代替として紙製に置き換える動きも速い。その「紙の記念日」がきょう12月16日。1875年のこの日、渋沢栄一が設立した東京の抄紙会社、王子製紙の前身の工場が営業運転を開始したことに由来する▼リサイクルの面でも、再生紙は早くから環境対応の象徴として企業が採り入れてきた。今では名刺や封筒など至る所に再生紙使用のマークが目に付く。ただ、製造工程でインキを洗い流したり漂白する過程でコストがかさみ、また汚水が発生するため廃棄にもお金がかかる。昔からコストはリサイクル品に常に付きまとう課題だ▼実は再生紙の歴史は古い。江戸時代から作られていた「浅草紙」は、江戸中の様々なゴミから分別された紙ゴミを再利用して作られたものだ。細かくした紙ゴミを釜で煮た後に冷やし、水気を切って板の上で叩いて平面にしてから乾かして再生紙として利用した▼その再生紙を取り巻く環境は厳しい。発行部数の減少で新聞古紙発生量が減り、中国向け古紙輸出の引き合いも強まり生産に支障を来した。製紙メーカーは再生上質紙の生産を縮小し、生産見合わせという結果にも至った。リサイクルしたくても原料がない。喜んでいいのか、悲しむべきか。(21・12・16)

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