ようやく、と言うべきか。非常事態宣言が現実のものとなる。指定された地域では、都道府県知事が法的根拠をもって外出自粛やイベントの中止などを指示できるようになる。違反しても罰則がないため強制力があるとはいえない。それでも、自ら感染のリスクを減らすとともに、自らが感染源にならないための行動を徹底するには必要な措置といえよう▼過去数週間、新型コロナウイルス(COVID―19)感染拡大の影響で経済的に打撃を受けている方々が大勢いる。非常事態宣言により、さらに窮地に追い込まれることが強く懸念される。また、感染が疑われる状態でもなかなかPCR検査を受けられないケースが少なくないと聞く。強い不安や葛藤を抱えるそれらの人々に対し、物理的にも精神的にもケアが求められる▼欧州各国や米国など、想定を超えるスピードで感染者が増えた地域のニュースでは、医療体制が限界に達するなかで、疲弊しながらも必死に働く関係者の姿が繰り返し映し出される。危険をかえりみず責務を果たそうとする姿に感動する一方で、彼らが限界を超えてしまわないことを祈る気持ちになる▼第2次世界大戦後に世界が直面した最大の試練。そう呼ばれる状況のなかでわれわれは、一人一人ができることを思い巡らし、辛抱強く実行するしかない。(20・4・7) 

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る